下町情緒三昧

21:00まで描いた後、さあ飯をどうするか。となった。


冷蔵庫の食料は既に尽きていた。


外食するしかあるまい、と外に飛び出すが、浅草の夜は意外と早い。
19:30には主たる店はシャッターを下ろしてしまう。残されているのは居酒屋だけである。
さあどうしようか、とうろついていたが、ふと以前から目をつけていたもんじゃ焼きのお店を思い出した。店はまさにおいでと言わんばかりに門を開いていてくれた。


穂里というお店である。「ほり」と読むらしい。
小座敷に4台の鉄板テーブルが置かれている程度の小さなお店である。が、大変良いお店だった。
もんじゃ焼きを焼くのは初めて。と伝えると、おじさんは小さかったころ食べたもんじゃのことを話しながら、本当の焼き方はこれだ!と丁寧に教えてくれた。
ビールをちびちびやりながらもんじゃを食べて、追加でイカのバター焼きを注文。実にうまい。


ちょっと酔っ払ったせいだろう、話はもんじゃのことに始まり、浅草のこと、仕事のことまで及び、22:00の閉店時間を越えてもずっとおじさんと話し込んでしまった。


浅草公園がどこにあるのか。ということがだいぶ前から気になっていたので聞いてみた。
おじさんは生まれも育ちも浅草なので何でも知っていた。
実は六区一体も浅草寺の地主の持ち物であり、昭和33年までは現在のWINSがあるあたりに浅草公園と呼ばれるエリアを地主が持っていたようだ。
が、浅草寺が戦争で焼け、それを再建する資金を調達するためにやむを得ず地主が浅草公園を売り払い、寺を再建したという。結果、浅草公園はなくなってしまい、今に至るそうだ。
...謎は氷解した。が大変残念なことである。個人的にWINSは六区には要らない。


それでも店内はまさに下町。もんじゃの味も、おじさん、おばさんの話もまさに下町。
この情緒がたまらない。やはり浅草が好きだ。
おじさんにそのことを伝えたら、


「そうか?俺は生まれも育ちも浅草だから、どこがいいのかよくわからないよ」


と答えていた。それもまた下町らしい感じがした。


仕事帰りにでもまた来よう。□