初対面

ホタルを見た。


生まれてはじめて見た。


さらさらと流れる用水路に群生する草の間をほのかな光を明滅させながら乱舞していた。


ホタルの光には、都会のイルミネーションが作り出すような人工的で目を刺すような強いインパクトはない。


が、ほのかな緑の明滅を繰り返しながら静かに乱舞するさまは、人工の光では出しえない有機的な品のようなものが感じられる。


誰が見るでもなく彼らは自らの役割りを静かに全うしようとしている。


それは桜の散るはかなさに似ていた。


橋げたの上からその自由に乱舞するさまを眺めていたら、時折近くまで飛んできて橋げたにとまったりする。


手のひらに載せてみたが、手の上を歩いている感覚がまるでない。やがて音もなく静かにとんでいった。


映像でも文字でも到底表しきれないこの感覚。


美しい。本当にこの世のものなのだろうか。とすら思ってしまった。


即物的な欲望の追求は一旦停止して、彼らのような存在がずっと生きていけるような自然を守ることに注力しないといけない。□