ミニシアターで公開される短編アニメ作品のようであるが、まずそのポスターに目を引かれた。絵柄に魅力がある。
高校生と思われる男の子と女の子が変な白い乗り物にのっている。
それだけで、見てみたい。と思った。そして、やっぱり傑作だった。
総時間30分。約12000枚の作画の全てをたった一人で完成させた宇木敦哉監督。
一人で制作するアニメーションといえば新海誠監督がパイオニア的だが、これまたすごい存在が現れたなあという感じだ。
センコと名のる謎の生命体とそれを操る高校生。そして主人公にまたも怪しい生命体を操って攻撃をしかけてくる敵らしき高校生。
バックグランドの説明はほとんどない。が、それがかえって想像力を気持ちよくつついてくるし、何より描きたいエッセンスだけが高密度で視覚に入ってくる爽快感もすばらしい。
食べたことのあるものに姿を変えるセンコは、エヴァンゲリオンの使徒のようでもあり、JOJOのスタンドのようでもある。またあるいはトトロのようでもある。
舞台設定はかつての角川青春映画のようでもあり、また大林監督の映画のようでもある。更に崩壊する町並みは大友克洋のようでもある。
しかしそれでいて新しい独自の世界観を持っている。感銘を受けたのは、そこである。
作者は、これまでおそらく見た多くの作品にいっぱいエネルギーをもらい、それらを自分の感性で煮込み、自らの作品の中にに埋め込んでいるのだろう。
これこそものづくりの原点なのではないか。
以前も書いたけど、人の作ったものから得る感動というのは、やっぱり単に消費しているだけでは他人に伝えられないんだよね。いくらすごいすごいと言葉を並べ立てても絶対に伝えられない。
消費によって得られたエネルギーを自らの世界に取り入れて新たなものを生み出し、提示する。
それこそ感動を伝える者としての正しい姿なのではないだろうか。と思うのである。□