M1グランプリ2010が終わった。
そして10年の歴史を持つM1グランプリも終わった。
その最後に相応しく、今年は誰が優勝するかが全く読めない密度の高い戦いとなった。
10年来の悲願であった「笑い飯」の優勝には素直におめでとう。と言いたい。
が、それ以上に特筆すべきはやはり「スリムクラブ」の衝撃だろう。
4分という時間制限にもかかわらず、こちらに心配を感じさせるほどのあの「奇妙な間の取り方」に腹がよじれた。
こんなやつらがいたのか...。
サンドイッチマンやオードリーなどの存在と同様、この予期せぬ個性の突然の出現こそが、近年のM1を面白くしてきた要素であると思うし、いつからかそれを第一の楽しみにして見ている自分がいた。今年も期待以上の個性が現れてくれた。
優勝は「笑い飯」であったが、それを食ってしまうほどの「スリムクラブ」のあの衝撃は、オードリーと同じように2011年の大ブレークを予見させる。
個人的には、たとえブレークしてバラエティ番組等の仕事が増えて行ったとしても、本来の姿=漫才師であるということ、その原点は忘れて欲しくないと願っている。
またM1グランプリの今年限りの終了については未だ疑問が残る。
視聴者としての寂しさもさることながら、漫才師にとっての重要な登竜門をそんなにあっさりと解消してしまっていいものなのだろうか。
「なんとかしてあの門をくぐり抜けたい.....!」
....と思わせるような絶対的な指標。目標。夢。
文学で言えば芥川賞、絵画で言えば安井賞、のようにその門をくぐることで世界がひっくりかえるという絶対的な光は時代に関係なく必要ではないか。
絵画の世界での登竜門であった安井賞は終わって久しいが、終わったことによる弊害は多大に思う。
指標がなくなることにより、個人が独立した目標をもち研鑽していく。という姿が求められる姿だったのかもしれないが、結果としては、ただ作家のエゴイズムが発散し、前面に押し出されただけの混沌を生み出した。
M1の終了によって、お笑いの世界にも登竜門が完全に消えてしまったとすれば、同様の混沌が訪れることになるだろう。
そうならないであってほしい。
これからのお笑いはどうなっていくのだろうか。もちろん、絵も。もちろん、日本も。□