アナログ

通勤の時間、

満員電車の中で新聞を読んでいる人を目撃した。

久しぶりだなと思った。なんだかほっとした。

近年のスマートフォンタブレットの普及によって、
車内で新聞や本を読む人の姿はめっきり減った。
誰も彼もがスマホタブレットをじっと見つめている。
たまに彼らのスマホを覗いてみると大抵はゲームやら
LINEやらをやっていて、電子版の新聞のようなものを
読んでいる人はあまり見ない。
おそらくネットのニュースで手早く見出しをながめて
必要な情報だけを摂取しているのだろう。

情報の取り方もすっかり様変わりしてしまったようだ。

だが、ここにきて新聞や本を開く人の姿もまたちらほらと
復活の兆しを見せ始めたように感じる。

デジタルの手軽さや速さによって、アナログは完全に
上書きされ消えていくものかと思っていたが、なかなか
そうでもないみたいだ。
アナログの不便さというものもときには人間の体には
必要な物なのかもしれない。
ありふれたサービス、行き過ぎた便利さは人間の体には
重すぎるのかもしれない。
毎日フランス料理のフルコースを食べ続けるように。

何年か前に僕を追い抜いたデジタルな人たちが、
また向こうから僕がもたもた歩いている場所まで
戻ってきたという感じだろうか。

新聞を読むサラリーマンの横で僕は本を読んでいた。□