今日の一冊

 

三毛猫ホームズの騎士道」赤川次郎著 光文社KAPPANOVELS(10点)

 

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かつて読んだのはこちら

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今回読んだのはこちら


30年以上ぶりの再読です。

今年の春に訪れた高松のビジネスホテルの本棚で偶然見つけて、久しぶりに読みたいなと思ったのです。
実は、生まれて初めて手に取った文庫本が、この「三毛猫ホームズの騎士道」だったりするのです。

当時から本屋が大好きで、実家近所の本屋には毎日のように通っていました。
本屋の奥には、天井までぎっちりと文庫本が詰め込まれたコーナーがありました。
当時まだ児童書しか読んだことがなかった自分は、大人のふりをして1冊手に取ってぱらぱらとめくってみたりするのですが、文字が小さすぎるし、読めない漢字ばかりでとても手は出せないでいました。
いつかここにある本が読めるようになるのだろうか。
そんなことを考えていたころが今でも思い出されます。
そして中学に進学したころ、満を持してさあ読むぞ。と手にしたのがこの「三毛猫ホームズの騎士道」でした。ちょうど文庫化して平積みになっていたこともあり、手に取りやすかったのだろうと思います。
今なら東野圭吾伊坂幸太郎あたりが売れっ子。ということになるのでしょうが、当時は赤川次郎がダントツでした。

恋、ユーモア、そしてミステリー。

軽やかな文体でありながら、すべてがしっかりと描きこまれている。
その親しみやすさが人気の理由だったのだと思います。
作品は次々と映画化もされていました。
赤川次郎作品は、当時の楽しい時代を象徴する1つの存在だったと思います。


三毛猫ホームズシリーズは今なお続いていて短編長編合わせて50作を超えます(すごい)。

血を見ると卒倒してしまう何とも頼りない独身刑事・片山義太郎としっかり者の妹・晴美。言葉は話せないけれども常に事件の真実を見ている三毛猫のホームズ。そして片山の後輩刑事・石津。
本格ミステリでありながら、読者とうまく視線があわさって、死者がでても、ユーモアのあるテンポの良い会話が緊張感をうまくほぐします。

ドイツの古城で起きた殺人事件。その真犯人を見つけるべくやってきた片山、晴美、ホームズと石津。
異国情緒があふれる古城での本格ミステリ。すべての伏線もしっかり回収し、犯人や結末もしっかりと納得させます。三毛猫ホームズシリーズでも屈指の完成度だと思います。

時代がたっても全く色褪せない完成度を感じました。面白いです。□