汚い話

 

今日は、ちょっと汚い話。

 

父が寿司屋を営んでいたころのことだ。

まだ営業時間中だというのに、父がオートバイで自宅に帰ってくることが時折あった。

 

父は自宅でトイレを済ませると、またオートバイで寿司屋に戻っていたのだった。

 

要するに、お店が忙しい時間帯で、お客さんがカウンター、テーブルを埋め尽くしているようなときに、どうしてもトイレに行きたくなってしまったとき、父はお店のトイレを使うことができずに、自宅に戻ってきて用をたしていたのである。

もちろん、自宅のトイレであろうが、店内のトイレであろうが、板前である以上、用を済ませた後はしっかり丁寧に石鹸で手を洗ってカウンターに戻るのであるが、そうしていたとしても、目の衛生としても、トイレに入るところを見られてしまうこと自体も極力避けるための苦肉の策だったのだろうと思う。

 

今、僕は週末にアトリエに通い、研究生の絵につべこべ言う仕事をしているのだけど、アトリエのトイレは使わない。

アトリエは別に飲食店ではないから、衛生上あーだこーだという問題なんてないのだけど、音を聞かれるのが嫌なのである。たとえ、小であっても。

アトリエのトイレには「音姫様」というトイレの音を消す装置が壁に貼り付けられている。
ボタンを押すと、ゴーッと大きな音がなり、トイレで用を足す音を上書きしてくれるのだが、音は消されるかもしれないが、用を足しているということ自体が明らかになってしまうのが嫌で、やっぱりトイレを使うことができない。

以前は自宅まで戻って用を足していたが、引っ越してしまったからその手も使えず、最近は図書館までトイレに行っているのである。これも父の血だろうか。

 

.........というような話を先日、アトリエの所長やスタッフらとスケッチに出かけたときに話していたら、

「私も音には気を使っています」

とスタッフの一人が言った。

そうだよな、みんな気をつかうよな、女性も多いところだしな。と思っていたとき。

「ちょっとトイレ行ってきます」

と彼が出ていったのだが。

しばらくすると。

 

「びろぐぶりぶぶふぁぴぴぷうぶりぶぶぶ」

 

トイレの方からとんでもない音響が聞こえてきたのであった........!!

 

気、全然使っとらんやん!

どえらい音でしたよ。いや、ほんとに。□