こんな夢を見た。
横長のオフィスに多くの長机が置かれ、社員がそこここに座り業務を進めている。
正面には黒板がしつらえてあり、入口があるが壁はガラス窓で覆われ廊下が見えるので、オフィスというよりも教室という印象が強い。
そこでデスクトップパソコンを立ち上げ業務をしていた自分に、先輩のN尾さんから声がかかる。
「俺、実は来年、年男なんだよね」
「えっ。それって、来年60歳ということですか」
まるで60歳には思えない。実際、N尾さんはまだ50そこらではなかったか。
というより普段、それほど話したこともない先輩なので実際の年齢もよくは分かっていない。
次に、S宮さんがやってきて声をかけてきた。
「これをみてほしい」
縦、横共に30cm程度の小さな本を開いて見せてきたそれは、双六だった。
S宮さんは、眉間にしわを寄せて尋ねてきた。
「これはサイコロで6を出したら、すぐにゴールができる小さな双六だ。
だけど、1をだしたら、3回休みになってしまう。
いったいどうして、こんな小さな双六に3回休みなんてルールをつけたのかね」
しらんがな。
S宮さんとも普段それほど話したことはない。久しぶりに話したと思ったら双六である。しかも答えようのない質問である。
次に、若手女子のT山さんが声をかけてきた。
「私、誕生日が8月2日なんです。くすくす。」
それだけを言うと、彼女は正面のドアから出て、廊下の窓からこちらをじっと見ている。そして、「くすくす」と妖しい微笑をこちらに投げると去っていった。
なんだ、くすくす。とは。
誕生日プレゼントが欲しいのか。
だが、T山さんとも普段プレゼントをあげるほどよく話している間柄ではない。
普段話すことのない人間が次々と自分に声をかけ、不条理な話をして去っていくが、どれも話の内容が具体的ではっきりしている。□