「フレグランス」という言葉を知らなった。
「香水」じゃないのか。
いつからそんな呼び方になったのだ。
そんなことすら、ニヤニヤと楽しみながら、これまでの我が人生で全く足を踏み込んだことがなかった、百貨店のフレグランスコーナーという場所にお忍びで行ったのである。
いわゆるクリスマスというやつである。
フロアを歩く人のほとんどは女性。しかも男である自分の服装は、仕事帰りのダサいいでたち............。
なんとなく居心地も悪く、目のやり場に困るが、時折男性の姿も見えていることに、ほっとしたりもする。どうやら彼らも同じ目的のようである。
「あの、すみません、、、
おーるどぱるふぁむ。えくらでゆー、、なんとかはありますかね」
ほとんどメモを棒読みする。
外国人にローマ字で書いた日本語を読ませているような感じだ。
ありますよ。と快活な返事が戻ってきて、直ぐに出してくれた。
名刺のような小さな紙に、その「おーるどぱるふぁむ」をプシュッとかけて、嗅がせてくれた。
良い香りである。という以外、言葉はない。香りというものは味と同様、言葉にできるものではない。
否、というつもりはない。この商品を買いに来たのだから。即答で、これください。と返答して購入をした。
クリスマス向けにきれいな袋に丁寧に梱包してくれた。
なんだかとても気持ちの良い買い物だった。
なんというのか、ほっこりした気持ちというか、充実感というか。
初めてのおつかいのような、小さな達成感というのもある。
これから起こる小さなサプライズに胸を弾ませるワクワク感もある。
思えば、自分はこういう「サプライズ」を仕掛けることが、この上なく好きな人間なのかもしれない。(似たようなことをかつてのブログにも書いたかもしれない)
絵画を発表することも、観た人がどういう顔をするのかをみてみたいという思いでやっている感じもするし、スーパーで新しい食材をみつけ、それを試す前などのワクワク感も同じような感じがする。
百貨店の戦略に踊らされているだけ。という言い方もあるけど、まあ、お互いに気持ちよくなっているわけだし、誰かが誰かに普段言えないことを言えるようなきっかけにしたりもできるわけだし、クリスマスというのは、よくできたものだと改めて感じた次第である。□