★ポンコツ。

 

以前、

クロッキー会のモデルさんと話していたときのことです。

 

「大学院で哲学を専攻しています」

 

彼女がそんな自己紹介をした刹那、

 

「また、ポンコツが来たぞ!」

 

と、先生が大声で言ったんです。

 

初対面の女の子にすごい間合いだなあと、

怒らないのかと心配して見ていたのだけど、

むしろ彼女の顔は、なんだか「ほっ」としたように見えたのです。

 

糸井さんが書いていた、

 

「人は、たいしたことないやつが完成形」

 

というひとことに、とても衝撃を受けたんだけど、

自分流に言い換えると、

 

「人は、ポンコツ以上にはなれない」

 

ということだとも思うのです。

 

これまで自分は「たいしたことあるやつ」になりたい。と、

ずっともがいていた(いる)と思うんだけど、

最近なんとなく、

そんなやつには、たぶん永遠になれないのではないか。

という気がしていて、

それでも、前に進むしかない。と、

もがき続けていたんだけど、

このひとことを受けたとき、

あぁ、自分はもう完成形に来ていたのか。

というような、安心感を感じたのです。

(だからといって、もがくのを完全にやめられる

 というわけでもなくて、やっぱりもがき続けるのだろうけど...)

 

きっとクロッキー会のモデルさんも、

「哲学をするなんて、すごいひとだ」と、

買いかぶられることに、

もしかしたら、びびっていたのかもしれない。

それを「ポンコツ」といわれたことで、

逆にほっとしたのかと、

今ようやく気づいたような気がしたのです。

 

戦いはずっとつづいていくけど、その都度、

完璧や完成形というところは、虹を追うように

先へ先へと行ってしまう。

永遠に手に入らない。ということを知っておくことで

その瞬間瞬間を、受け入れ、楽しめるようになるのではないか。と思うのです。□