以前、
クロッキー会のモデルさんと話していたときのことです。
「大学院で哲学を専攻しています」
彼女がそんな自己紹介をした刹那、
「また、ポンコツが来たぞ!」
と、先生が大声で言ったんです。
初対面の女の子にすごい間合いだなあと、
怒らないのかと心配して見ていたのだけど、
むしろ彼女の顔は、なんだか「ほっ」としたように見えたのです。
糸井さんが書いていた、
「人は、たいしたことないやつが完成形」
というひとことに、とても衝撃を受けたんだけど、
自分流に言い換えると、
「人は、ポンコツ以上にはなれない」
ということだとも思うのです。
これまで自分は「たいしたことあるやつ」になりたい。と、
ずっともがいていた(いる)と思うんだけど、
最近なんとなく、
そんなやつには、たぶん永遠になれないのではないか。
という気がしていて、
それでも、前に進むしかない。と、
もがき続けていたんだけど、
このひとことを受けたとき、
あぁ、自分はもう完成形に来ていたのか。
というような、安心感を感じたのです。
(だからといって、もがくのを完全にやめられる
というわけでもなくて、やっぱりもがき続けるのだろうけど...)
きっとクロッキー会のモデルさんも、
「哲学をするなんて、すごいひとだ」と、
買いかぶられることに、
もしかしたら、びびっていたのかもしれない。
それを「ポンコツ」といわれたことで、
逆にほっとしたのかと、
今ようやく気づいたような気がしたのです。
戦いはずっとつづいていくけど、その都度、
完璧や完成形というところは、虹を追うように
先へ先へと行ってしまう。
永遠に手に入らない。ということを知っておくことで
その瞬間瞬間を、受け入れ、楽しめるようになるのではないか。と思うのです。□