「竹屋~ 竿竹~
2本で千円。2本で千円。20年前のお値段です」
住宅街の中を、軽トラックがゆっくりと走っていく。
このトラックはいつからいるのだろうか。
ふと考えてしまう。
自分が幼少のころにも、全く同じような軽トラックを
見ていた気がするのだが。
20年前って、いつから見て20年前なのだろうか。
幼いころに町中を自転車で走りながらラッパを吹いていた
豆腐屋さんはいなくなってしまった。
車に引かれたヒキガエルの死骸や、
飼い主に見放されて勝手に散歩をしているどこかの犬も
姿を消してしまった。
つい最近までいたような気がするのだけど。
経済の成長を最優先に手を取られていた大人たちは
そんなものに目を向ける暇が無かったし、
それがあった、いたところで別に大きな問題でも
なかったから放置されていたと思うのだけど、
経済成長が落ち着いちゃって、
先送りしていて見ていなかったものに目が届くようになって、
放し飼いの犬とか、家の庭で子供のために花火をするとか、
公園のちょっと危険な遊具とか、
あれがだめだこれがだめだと、全部消えて行っちゃった。
で、やることがなくなったなんて、あえいでいたりして。
みんな暇になっちゃったんだろうね。多くは悪い意味で。
むかしは良かった。なんていうのは、ただのノスタルジーだ。
いいところだけ見ている。という声はあるけれど。
負け犬の遠吠えになるかもしれないけれど。
やっぱり、いいたい。
昔はよかった。確実に。
人間が、人間らしいペースで生きることができた最適な時代があった。□