今日の一冊

 

「栞と噓の季節」 米澤穂信著 集英社

 

 

 

前作は短編だったが、本作は長編。

キャラクターの所作や、会話の1つ1つ、をとっても、表現が豊かで読ませる。

高校生がもつ青さや苦さを底に持つ小さな事件であるが、それぞれが持つ秘密をマイルストーンのようにおいて解消させていくことで、最後までじっくり読ませてくれる。

上手い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下、自分へのメモ。全てのネタバレを書くので注意)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・図書館に返却された「薔薇の名前(下)」に挟まれていた栞は、トリカブトの花をラミネートしたものだった。

・図書委員の堀川と松倉は、栞を隠し、持ち主を探すと同時に栞が作られた理由の調査を開始する。

・写真部の岡地恵が撮影した「開放(Release)」が写真コンクールで大賞を受賞し掲示されるが、写真のモデル・和泉乃々花がトリカブトの花を抱えジャンプしている写真だった。写真の撮影場所は学校の裏と聞き、向かう堀川と松倉。そこにいた美人の同級生・瀬野。花壇に墓を作っていたが、そこにはトリカブトが埋められていた。
瀬野は堀川・松倉から栞を奪い、燃やす。

 

〇登場人物がそれぞれの思いで、嘘をついている

・掘川:「薔薇の名前(下)」を返却したのは図書委員長であるとしっていたが誰がどんな本を読んだかを守秘とするため、誰が返したかはわからないと嘘とつく。

・松倉:バイトしている深夜のクラブで常連の「メリーさん」が栞を持っており、栞のことは知っていたが、バイトのことを隠しながら、行方不明となったメリーさんを捜索していたことを隠していた。(メリーさんの正体は、嫌われ者教師・横瀬が毒を盛られたらしく、そのまま姿を消していた北林だった)

・瀬野:栞は、瀬野とかつての同級生・櫛塚奈々美の二人が立ち上げた「姉妹団」で、「弱い自分が”相手を生かしている”」と思えるようにための「切り札」として2枚作られたものだった。姉妹団は櫛塚の転校で終わっているはずだったが、誰かがその意思をつぎ、栞を量産してばらまいている。瀬野はその犯人を追い詰めたいと考えていた。

・東谷(図書委委員長):新・姉妹団に誘われ栞を受け取り、隠していたが、怖くなっていた。

・和泉乃々花(写真のモデル):真犯人。新・姉妹団のボス。栞を11枚作ってばらまいていた。櫛塚奈々美の妹。姉と瀬野の考えを受け取り暴走。図書委員の1年生・植田の彼女。植田を通して情報を得ていた。

 

〇語録

P133  「たぶん、図書室は、っていうか図書館は、偉大になれる可能性の担保何だと思う」

 

P140 「わたし、ああいうやり方が恰好いいとは思わない。誰だって結局、人の目の中で生きていくんだし。でも、本当のことを言うとちょっとだけ、やってみたかった」

 

P325 「わたし、自分と和解したいんだ。だから・・・いまはもう、栞はいらない」