今日の映画「ちょっと思い出しただけ」

(注意:ネタばれします。これから観る方は読まないように)

 






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観終わって、真っ先に口から出た言葉は

 

「ニューヨークと結婚かよっ」

 

だった。

多分、多くの視聴者がそう叫んだのではないか。
ラスト近くで、描かれる現在のシーン。今住んでいると思われるマンションのベランダでタバコを吸う葉の後ろから、ふいと、赤ん坊を抱いて登場するニューヨーク。
コンパで出会った男が赤ん坊を抱いて現れるという1カットで、すべての結末を伝えきってしまうという手法は、映像では当たり前のやり方なのかもしれないが、どんでん返しというか、すぐれたミステリーの裏切りのようなセンスを感じて、自分の中でちょっとした「爆発」が起こった。静かに時間を遡っていく映画だったから、突然差し込んでくる衝撃が、脳裏に焼き付いてしまう。

 

ダンサーを目指す照生の誕生日を1年ずつ遡っていくという構成が面白い。

照生と、タクシー運転手・葉(よう)の恋愛の姿には、二人しか紡ぎえない強さ、深さ、脆さ、苦さがあり、2時間をかけてつづられるその濃厚な時間が、コンパの間、外でタバコを吸っている間にふと出会った男にかっさらわれてしまうという、作り物のような軽さに、失望を感じさせられながらも、妙に、共感させるリアルがある。

 

クリープハイプ尾崎世界観の、やや退廃的なライブハウスでの演奏や言動、照夫と葉が出会うきっかけとなった劇中劇などが、スパイスとなって映画を締めている。

 

見終えた後に、「ちょっと思い出しただけ」というタイトルを眺めると、また沁みてくる。□