大人だまし

「子供だまし」という言葉がある。

子供はだませても、大人はだませない。
そのような稚拙で浅い作品に出会ってしまったとき、
大人は子供の願いにこたえるためと歯をくいしばり、
その子供だましの終焉を待ちわびる。

「大人だまし」という言葉はない。

だが、ここであえて「大人だまし」を定義してみたい。
子供どころか大人までもが、まんまとだまされてしまう、
奇跡のような作品が世界にはある。
それを僕は大人だましと呼ぶことにしたい。

先日京都で見学した「エリック・カール展」。
これぞ「大人だまし」の代表例ではないか。
世界が知る名作絵本「はらぺこあおむし」の作者である。
齢88歳を迎え、今なお制作にいそしんむエリック・カール
鮮やかな色合いで堂々と描かれた可愛い動物たち。
子供たちに視線を合わせ、無駄な要素、難しい要素を
とことんそぎ落としている。
それでいながら、動物たちの表情やテクスチャが
変化と動きを持ち、見るたびに表情を変える深さをもっている。
シンプルであるほど難しく深い。
その生み出し方をエリック・カールは体得している。
緑、赤、黄、青...まるで宝石箱のような作品が続く。

会場は小さな子供をつれている家族が圧倒的に多かったと思う。
だがその小さな子供たちよりも一層驚き、喜んでいたのは、
何を隠そうこの僕なのであった.....。

このような大人だましを僕もいつか必ず仕掛けたい!と強く願っている。□

 

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