ノスタルジー

 

下北沢をおとずれた。

 

もう10年ぶりくらいになるだろうか。すっかりご無沙汰になっている。
学生のころは下北沢は通学路で完全な日常だったけれど、就職してからは単なる通過駅になってしまっていた。
その下北沢もその長い歳月を経て、すっかり変わってしまった。
もっとも大きな変化といえば、やはり小田急線の地下工事である。始まったことは知っていたけれど、これほどまでの変化とは.....。
小田急線を全て地下に埋めてしまう、それでいて井の頭線は地上に残す。というなんともアクロバティックな工事をごりごりと進め、下北沢はかつての姿を大きく変えてきている。

南西口という新しい改札を出てみたが、まず自分がどこに出たのかが全くわからない。
ならば、こちらも変化で応戦だ!ということでiPhoneを取り出し、GoogleMapで自分の位置を確認した。ああ、ここか。
すっかり浦島太郎の気分でかつてのナワバリ?をふらふらと歩き始めた。

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かつて地上に走っていた小田急線の線路跡地は全てKEEPOUTとなっている。
新しい商業施設でもできるのだろうか。南口と北口をつないでいた、思い出のバラックたちも全て取り壊され、南から北のピーコックが丸見えになっている。
バリケードの間をすり抜けながら北と南を人々が行き交っている。

 

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アド街ック天国で紹介された「呑んべえの最後の聖地」と言われたバラックも、完全に閉鎖されてしまっていた。

 

僕の知っている下北沢はもうなくなってしまうのだろうか.....。
そんな切なさを感じながら街を歩いていく。
ふと小学生時代のことが脳裏をかすめた。

小学校低学年の頃、ガンダムのプラモデルを買うために下北沢のSUNNYという模型店を訪れたことがある。
当時ガンプラはたいへんな人気でなかなか手に入らなかった。
ネットも無い時代だから「近所のプラモ屋に日曜日に入荷するらしい」といった、嘘か本当かもわからないような怪しい情報にしがみつくしかない。朝一番で並んでみても売り切れただの、入荷しなかっただの。そんなことの繰り返しであった。

そんな中「下北沢のSUNNYにはガンプラが山ほど溢れているらしい」という噂が流れてきた。思えばあの頃は全て誰が言い出したかもわからないような怪しい噂だけがあり、それだけを信じて無茶な冒険をしていたように思う。
当時小学生低学年だった自分にとって電車に乗って出かけるということは、未体験の大冒険だった。
結果として、ガンプラは確かにあふれていたように記憶している。
僕らが欲しいものは、危険を冒さないと手に入れることはできないし、栄光は危険の先にしかない。なんてことを、ガンプラを通じて学んだような、学ばないような.....。

そして今、この変わり果てようとしている下北沢でSUNNYのことが、とても懐かしく思い出されて、どうなっているんだろう...?という気持ちを抱え足を運んでみたのであった。

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あ..........あった......!!!!
「街の模型屋さんSUNNY」の看板が見えた。

 

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猫まっしぐらだ。

当時のまま、SUNNYはまだ模型屋さんとして営業を続けていたのである!!
店内を見学させてもらってまたびっくりしてしまった。
通路はなんと30cmくらい。痩せている自分でもカニ歩きでしか通れないような狭さの中、天井までぎっしりとプラモデルが埋め尽くされているのであった。下の方に積まれているプラモが欲しい時には一体、どのようにして取り出したらいいのだろうか。
さらに新しく拡張したのか、当時もあったか、2階もあって主にフィギュアを扱っていた。
30年もの歳月を経て、プラモデルは量販店でもネットでも買えるようになってしまった。きっと経営は容易ではなかったろうと思う。それでも当時から模型を愛するファンが支え、またオーナーも努力し、今なお、SUNNYは元気で営業を続けていたのである。
もしかしたら、今や、売るためというよりも、SUNNYはオーナーのコレクションの倉庫なっていて、欲しい人がいたら売る。くらいで続けているのかもしれない。そしてその粋な姿がまたファンを惹きつけるのかもしれない。

下北沢の駅前は大きく変わろうとしていた。
だが街や劇場などは相変わらず当時のままそこにあって、これからもずっと古くて新しい街として続いていくのだろうと感じた次第である。

ノスタルジー、っていいよねー。□