城崎にて その1

2009年度男の日開催。


本年度の開催地は城崎温泉である。


城崎温泉は初めてではない。数年前に一度行っている。
当時の印象は、志賀直哉の小説「城崎にて」のイメージどおり、死を想うに相応しい静寂感。そして、昔ながらの情緒あふれる古い温泉地という感じだった。


が、今回改めて行ってみて大きな変貌が感じられた。
昔ながらの情緒は残しながら、これから訪れる若い人たちを招き入れるようなコンセプトが植えつけられていた。


具体的には、おしゃれなレストラン、カフェ、マッサージといった複合商業施設が出来たりしている。
それでいて、きっちり昔ながらの情緒も残っていて、夜になればかつての情緒も失わず宿の宿泊客が下駄を履き、からころと涼しい音を立てながら外湯めぐりを楽しんでいる。
これは本当にすごいことだと感じた。


というのも、個人的には「かつての古き良きものを失わずに新しいものを取り入れていく」ということは、非常に難しい(というかほとんど不可能)と思っているためだ。


古きよきものというのは「不便であること」だと思っている。


対し、新しいものは「便利なもの」だから、それらが相容れないのは当然なのだ。


かつての古き良き日本の面影は、品格のない意思によって手を加えられ、ろくでもない形に変貌し、消えていってしまっている。
だが、城崎温泉はかろうじて、絶妙なバランスで古さと新しさの良い部分の共存がうまくできている、非常に稀な事例のように感じた(少なくとも今は)。


たぶん、偶然の結果なのだろう。


多くは失敗して、良いものは消えていくことになる。
とはいえ、個人的にその挑戦を否定するつもりはない。時代が変わり人も変わる中で、町も変わらざるをえないからだ。
城崎も、日本有数の温泉地として今におごらず、顧客獲得のために生き残りをかけた挑戦を続けていかなくてはならないのだろう。


ただ、願うのは、「正しい変革をしてほしい」ということだ。


きっちりしたコンセプトを持ち、よきものを残しながら更に良くしていく。


そういう姿勢で変化に向かってほしいということだ。□