平行世界の交わり

歓送迎会のシーズンである。

僕らの組織でもこの春に大きな組織改変が行われた。
これまで一緒に仕事をしてきたわが部の、1つの課が解消されて、メンバーがそれぞれの部署へ異動していく。

楽しい飲み会だった。
飲み放題の酒がおそるべき速度で消化されていく。
最後の最後にふらっと主賓の課の課長が僕の前の席に座った。

........?

正直、仕事でご一緒したことはあまり無くて、一瞬とまどいを感じた。
何を話そうかなと考えていた刹那、課長から衝撃の話が繰り出された。

「妻がお世話になっております」

.........!..........妻って誰?

ゆるく酒が回る脳に、鈍いボディブローのようなパンチがあびせられて激しい脳震盪が起こる。これまでの人生で出会った全ての人間の履歴帳への、奇跡的な速度での脳内検索行われて、即時に答えが割り出された。

「もしかして!?」

なんと、僕が所属する絵画団体でお世話になっている女流作家の旦那さんが、その課長なのでした。

ノックアウト。

世界って狭いですね。
技術畑と芸術畑は永久に相容れないであろうと思っていました。
僕はその永久に接点を持ちえない二つの平行世界を、行ったり来たりを繰り返しながら、二刀流として生きてきたつもりでした。
でも「平行世界」なんてないのだな。
平行と思われていた世界も、いつかは必ずどちらかからの歩み寄りがあって交わりが生まれる。交わらざるを得ない。交わらずには済ませられない。
全く関係のないと思われた世界も、どこかでつながり交わっているのです。

技術畑の人々とは芸術の話はできないものだとずっと思っていました。表層の社交辞令的な接点はもてたとしても、本質ではつながることはできないと。でも、今改めてそれを疑わなくてはいけない気がしています。
世界は狭いけど、世界は思った以上に広い。
固定観念に縛られず、いつも柔軟に生きて行きたいものですね。□