ニュージーランド旅行記5

 

三人での旅だった。

 

それで僕は提案したのです。

「各々が、例えば100ドルずつ出し合って封筒に入れ、共同資金とする。
 旅のそこここで掛かる費用をその共同資金から出すようにする。
 無くなったらまた同じ分を出し合って封筒に補充する。
 最後に残ったお金を3等分してそれぞれに返す。」

空港からホテルへのバスの費用など、請求された時に割り勘でお金を集めて支払うのはいちいち面倒である。だが、海外の旅では割り勘で金を支払う機会が頻発する。
そんなとき共同資金を作っておけば、面倒な計算も不要になるし、お釣りを分ける手間も不要になり、スマートに運用をすることができる。
複数人数で海外旅行をするとき、僕はいつもこのやり方を提案をする。
そしてほとんど、このやり方はうまく回る。
我れながらとても良いやり方だと思っている。

が。

実はこのやり方は僕が考え出したやり方では無い。

人生で初めて訪れたスペインで親友が教えてくれたものだった。
当時、旅慣れていなかった僕は、右を見て驚き、左を見て驚き、戸惑った。
だが、旅に慣れていた親友は、全く動じる事も無く、旅を楽しくするためのいろいろなスマートなアイデアを僕に見せてくれた。
それから何年かのち、僕はフィレンツェベネチアなど一人で旅をするまでになったが、親友に教えてもらったノウハウを最大限に活かして楽しく旅をすることができた。


こんなこともあった。
アトリエの先生とフランスのヴェズレーと言う村を訪れたときのことだ。
ヴェズレーの村でスケッチをして、ホテルに戻ったとき先生がいった。

「腹減ったろ。カップヌードル、食うか。」

スケッチで世界を旅している先生は旅先で小腹が空いた時のために、常にトランクにカップヌードルを入れて旅をしている。
スケッチに疲れ、夕食までまだ時間があるときだった。二人でカップヌードルを食べた。海外で食べるカップヌードルの味は体に浸み込むように美味かったことを覚えている。以来、僕も海外旅行時にはトランクにカップヌードルを入れる。
これも海外旅行で先輩から学んだ一つのノウハウである。
そして、この度のニュージーランドでも朝食のついていないモーテルの朝に、カップヌードルを食べたのだった。


これまで親友、先輩たちと旅をしたが、僕のノウハウは全てそれらの旅で学んだことばかりである。
旅で出会った美しい景色や食事も忘れがたいものであるが、一緒に行った仲間たちに教えてもらったこれらのノウハウも忘れがたい旅の財産だと思っている。

このニュージーランドの旅でも、また新しい学びと経験をすることができた。

次の旅も沢山のノウハウと共に、更に新しい出会いを楽しんでいけたらと思っている。(おわり)□