今日の一冊

 

「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン著 創元SF文庫(7点)

 

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暮らしの手帳 第五世紀3号の特集記事「マイベストミステリー」で北村薫氏が「星を継ぐもの」を紹介していた。
この記事を読んだとき「どこかで聞いたようなタイトル?」と思ったのだが、すぐに最近読んだ 小島秀夫氏著の「創作する遺伝子」の冒頭でも紹介されていた作品だと思い至った。
書店に行くと、古い本であるにも関わらず平積みされていて、今度はその帯に、最近映画化で話題となった「屍人荘の殺人」の作者・今村昌宏氏が「絶賛」と書いている。

3名もの作家、アーチストが間違いなくベスト!と推すほどの作品である以上、絶対に読まなくてはならないと思い、正月の課題図書とした。

 


※ 注意!! 以下、ネタバレを含みます ※

 

 

ミステリーとしてはすごい。

月の裏側で発見された5万年前に死んだとされる「チャーリー」は地球人と全く同じ人類でありながら地球人ではないのである。「チャーリー」はいったいどこから来たのか?....というのが謎のはじまりである。
物語は火星と木星の間にかつてあったミネルヴァという星、そして木星の衛星ガニメデにまで及んで、とんでもない結論にすすんでいく。
北村薫氏が「壮大な密室」と呼んだことにも納得する。

が。

だが、残念ながら僕はSF小説がとても苦手のようである。

死体が発見された。という冒頭を読んでも「SFでしょ」が頭の中にあって、どうせ「死体は未来から来たのだろう」だとか、「死体ははるか遠くからワープしてきたのだろう」と謎の解決もSFで済ませるのだろうと思い、ミステリーとしての好奇心がどうもわいてこない。

その上、文章はとても難解で、どういうシーンを描いているのか、何をくどくどと議論しているのか、の映像や趣旨が頭にほとんど浮かんでこない(単に僕の頭が悪いだけかもしれないが....)。サクサクと読み進みたいのに、いちいち難解な文体が足を引っ張って、ストレスがたまってしまう。

最後にハント博士がすべての謎を解明したときはすっきりしたような気がしたが、その直後にダンチェッカーが「まだ謎は解けていない」と蒸し返して、また話がややこしくなってしまった。

火星と木星の間にあったとされるミネルヴァは巨人の星で、生態系が崩れ惑星の存続が怪しくなり、巨人が地球から人類や植物を運び込んだと書いているけど、そんな手間をかけずに、なんで地球に永住しなかったのか。

巨人は結局ミネルヴァを守れずに、ミネルヴァに運び込んだ人類を捨てて太陽系を離れたとか言っているのに、冒頭の5万年前の月面ではチャーリーと巨人が仲良く行動したりしていて。まだ太陽系にいるじゃないか。

落ち着きかけた謎を蒸し返すことはしているのに、気になることが解明されてない。

正月に読み終えるつもりの1冊だったけど、そんなこんなで遅々として読み進まず、結局半月以上もかかってしまった。その挙句に、なんだかストレスが残るような形となってしまいました。

確かにすごい壮大な話ではあるけど、ミステリーとして推すのならば「SFが大丈夫な人」が絶対条件だと思う。

小説ではなくて、映画とか漫画で見たかったな。
あるいは、ライトノベル作家とか、文章がうまい日本人作家に、超訳で書き直してほしい一冊である。□