居酒屋から電話がかかってきた。
こちらからかけるつもりだった。
個展に来てくれるという先輩のために宴会を催すことになって、画廊界隈にあるとびきりの店を予約していた。京都の名店である。
が、日に日に猛威を増す新型コロナウィルスによって緊急事態宣言が発出され、先輩からやむなく見学キャンセルとしたいとの連絡を受けた。
宴会の予約をキャンセルしなくてはならなくなった。
電話しよう。そう思っていた矢先、居酒屋の方から電話があった。
「昨今の事態を受け、当面お店の方を休むことになりました.....」
こちらがキャンセルする以前に、お店の方からキャンセルとなったのである。
くさくさする。
個展と宴会は一心同体である。
宴会をするために個展をひらいているようなものである。
宴会は、すべてを作品にこめて出しきった自分への最大のごほうびである。
それが絶たれてしまったことの落ち込みは大きい。
外に出れば、満開の桜である。が、こちらのほうも花見という状況ではない。
花見をするために生きているようなものである。
それすらも絶たれてしまった。さらに落ち込んでしまう。
歯を食い縛り、堪え忍ぶしかないのだろう。
できることをやろう。そしてこの騒ぎが落ち着いたら、倍返しで飲みに行こう。
個展は、間違いなく、自己ベストです。□