喪失の美術展

 

2020年は本当に美術展の当たり年なんです。

 

の、はずでした。

 

だがその多くが見られないという事態になってしまった。

 

ゴッホ展が払い戻しになりました。

 

そして、

ロンドンナショナルギャラリー展、

コートールド美術館展、

西国三十三の至宝展、

神田日勝展 等々。

 

名だたる作品が並ぶ貴重な数々の展覧会がほぼ閉鎖状態。

 

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東京国立博物館で予定されていた法隆寺の至宝は、なんと「中止」となりました。

会期がまるごと緊急事態宣言の時期に重なって延期もできないということでの決定となりました。

先日放映された日曜美術館で本展の特集をやっていたけど、今となってはこの番組だけが展覧会の内容を唯一確認できる貴重な映像アーカイブとなってしまいました。

 

番組を見ていてなんだか不思議な気持ちになりました。

 

法隆寺金堂壁画の模写が、この展覧会で展示されていたのです。

実は法隆寺の金堂壁画は昭和の火災で焼け落ちてしまっていたんだけど、この壁画を当時の名だたる画家たちを終結させて復興させようとしたときに、これらの模写や写真が焼け落ちる前の貴重なアーカイブとして生き、見事に当時に限りなく近い形で金堂壁画が復活したというエピソードが紹介されていました。

 

そして今、法隆寺の至宝展がコロナによりなくなってしまったんだけど、その前に取られていた映像アーカイブで展覧会の様子を僕らは見ることができています。

 

金堂壁画は、火災前に残していた模写や写真によって復活し、
展覧会は、中止前に残していた映像によって鑑賞ができました。

事故や天災が起きる前に残されていたものがマトリョーシカのようにつながっていたことを不思議に感じたのです。

 

今でしか見られないわけじゃない。

 

この事態が去ったら、生きてさえいたら、また会える機会もあるだろうさ。

 

花に嵐のたとえもあるさ。さよならだけが人生だ。□