おもしろい。
とても読みやすく、本格ミステリの世界にどっぷりとつかれる。
真相にも驚愕して、トリックもとても明快。
アガサ・クリスティのもつミステリのすばらしさを思い出させてくれるような、純和製ミステリだ。
このような本こそが、最も理想的な本格推理小説だと思う。
(以下、ネタバレ含めた自分へのメモ)
・アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」をイメージさせる本作だが、本土と島の物語が同時に進むところや、島においても、十角館の建設者・中村青司の四重猟奇殺人事件が重なり、物語の層がとても厚く、楽しい。
・プロローグの犯人の独白で海に投げ捨てられた真相が書かれた紙の入った瓶が、エピローグでしっかりとつながる美しさ。
・新装版での、401ページから402ページにページをめくらせたときに目に飛び込む真相。すべての概ねの答えが、たった1行で解消する美しさ。そして衝撃。
・読み始めてすぐ、学生時代に読んだことがあることを思い出したが、「犯人は島にはいなくて、本土の方にいるんだよ」といった、そんな漠然とした記憶だけがあったのだけど、島にいるメンバー=ヴァン・ダインが犯人であると知ったとき、度肝を抜かれてしまった。
島と本土の遠隔地にいる二人が同一人物だなんて、全く考えも及ばなかったのである。本当に、気持ちよくだまされた。やっぱりミステリって最高だ(なかなかこんな気分にさせてもらえる名著には出会えないのだが)。□