1枚の絵が完成するまでに、ものすごくこじれる。
目の前にある絵がどうしても面白くなっていかない。
設計図の段階では「行ける」と確信したはずなのに、
キャンバスの上に展開した途端「全然面白くない」。
それは、万全の準備をしたつもりで大海原にこぎだしたが、
海のど真ん中で、方向を見失って、自分のいる場所が全く
分からなくなってしまったような状態である。
東へ漕ぎ、北へ漕ぎ、西へ漕ぎ、南へ漕ぐ。
結局元の場所に戻る。そんなことを延々と繰り返す。
にっちもさっちもいかなくなって、
結局、くそったれ。と叫びながら、
キャンバスを窓から投げ捨てたりするのだ。
以前、先輩が個展に来てくれた時、
どうしたらこんなことにならずに済むのか。
どのように絵を作ったら迷わずに済むか。を聞いてみたのだ。
すると、先輩が言った。
「俺も同じ。F4号の1枚に1か月以上かかった。」
先輩ですら、自分と何ら変わりはないの遭難者なの」であった。
絵画制作の経験が長くなると、自分の描く絵のパターンに飽きてしまう。
その飽きた自分をどうやて楽しがらせるか。面白がらせるか。騙すか。
つぶしてみたり。
上下をひっくりかえしてみたり。
左手で描いてみたり。
あてもない、長い長い釣りをやっているような。
ベテランだろうが、あまちゃんだろうが、作り手は誰でも同じ。
遭難した後でも、絶対に生還する。そういう覚悟でやるしかないと。
そういう励みや覚悟が必要なのだということを、勝手に受け取った。
楽に絵が出来上がる才能なんてのはどこにもなかったということを知った。
ものづくりとは、ある意味、「デスマッチ」なのかもしれない。□