今日の一冊 鵺の碑

 

「鵺の碑」をようやく読み終えた。

 

 

我ながらこんな時期によく読み切ったものだと、
感心する以上に、呆れる気持ちもある。
よほどなんでしょう。
どれだけ時間が無くても、忙しくても、
1日1文字1行でも本を読み進めたいという気持ちが。

 

一言でいえば、「落語」です。

登場人物の複数の視点が、鵺の各部位で設定された章に分けられて
並行で物語が描かれるが、まあ、長い。キャラクターたちの対話が。
本編に関係のない蘊蓄やら座談やらが続く印象で、とっとと結論を
聞かせろよ。と思う所もあるが、そういう読み方をするものじゃあ
ないのでしょう。それが落語を聞かせるようなところに似ている。
物語がどうこうというよりも、その過程の聞かせ方を愉しむというか。

 

 

(注意:以下ネタバレのメモ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・3人の死体が消える。
 1人は崖から転落した植物学者。2人は社会の裏を暴く新聞編集者の夫婦。

終戦間近に原爆を作るための材料を開発する施設が作られ、
 植物学者はそれを目撃した者。夫婦はそれを暴こうと調査していた者だった。
 原爆の開発を隠ぺいするために死体は隠された。としてストーリーが進む。

・が、その正体は、原爆の開発をするための施設ではなく、原爆を開発する「ふり」をしている施設だった。

・本当に原爆を作っていると信じているスポンサーと、作っているふりをしていることを隠そうとしている研究者の両方が、めいめいそれぞれの秘密を隠ぺいするために、死体を隠したり、引っぱり出したりしていた。

・施設の周りにいたものが目撃した「光る猿」や「燃える碑」は、原爆をつくっている=周囲に放射能があふれている。ように、なんちゃって研究者が、スポンサーにまじめにやっているように見せるために、まき散らされた夜光塗料や化学物質だった。すべてフェイクの産物。

 

ざっとこのようなストーリー。それが800ページにわたって描かれているというのが、やはり「落語」だと思うのだ。□