夢十夜 Season3 第九夜

こんな夢を見た。

大学時代の漫画研究会の部室にいる。

少しずつ空が暗くなり始めている夕方。

部室には自分を含め、同期のシンイチローと名も知らない先輩との3人しか居ない。

部室に置かれた部員同士の連絡帳「まるが」に意味不明な落書きをした後、帰ろうとなり、3人で部室を出た。

3人で帰るつもりでいたが、同期のシンイチローが「用事があるから」と反対方向に去って行った。

結果、名も知らない先輩と自分の二人が残されたが、なんとなく気まずくなって「僕も用事があるので...」と先輩と別れて駅に向かった。

ギンレイホールから飯田橋の東口に回り込んだとき、歩道橋から同期のジョリーがこちらに向かって来たので、挨拶がてら声をかけたのだが、眉間に皺を寄せて目をそらされた。

そのとき、はたと気づいた。

「彼はまだ、僕のことを知らないのだ」

さっきのシンイチローの余所余所しさも、僕らが出会ってまだ間もなかったからだったのではないか。先輩の名がわからないことも。

自分は、大学に入学したばかりの頃に戻っていた。

また一から勉強し直せる。全部やり直せる。そう気づいた自分は、帰るのをやめてすぐに大学の図書館に戻っていった。□