アンフェアーな夜

●第一部
朝9:00AM。


桜橋近くの野球場へ隅田川花火大会の場所確保に行く。
朝9:00だというのに茹だるような暑さである。
が、既に会場はビニールシートでびっしり埋め尽くされている...。


昨晩から長蛇の列ができていたようである。
場所を取れた人はご苦労様、ということになるのだが...。
道端で夜を明かすなどということは時間と体力のある学生だけの特権である。
時間のないサラリーマンや、体力のないじいさん・ばあさんにそんなことを真似る余裕はない。
なんかアンフェアーだなと思う。抽選にしたらいいのに。


.....と思いつつ。
やっぱり屋上かな。と自宅マンション屋上にビニールシートを貼り付けた。
これで一安心。□



●第二部
朝10:30AM。


自室に戻り、しばらくすると携帯が鳴る。
不動産屋からである。なんとなく予想が付いた。


「屋上に取り付けたビニールシートを今すぐ撤去せよ、と大家からの命令があった」とのこと。


何言ってやがる。
屋上には俺がビニールシートを敷く前に、既に他の椅子だの御座だのが並べられていたじゃねえか。...と問いただすと、それは大家が使うものだと言う。
住民は屋上の出入り禁止だと言うのである。


屋上は危険というおふれで、大家含め誰もが出入り禁止。というならまだしも。
お前らだけ出入り可か。
更なるこのアンフェアーに脳が沸騰する。不愉快という言葉はこんなときのためにあるのだろう。
更に、大家が直接俺の部屋に来るのでなく、不動産屋を使って言わせてきたという態度にもはらわたが煮えくり返る。この上なき卑怯者である。


悪い意味でやはり浅草も「東京」なんだ。と思い知る。□


●第三部
夜19:00PM。


全てのくさくさした思いを絵にぶつけた。アドレナリンが噴出してかえって没頭できた。


気が付くと19:00。花火打ち上げ目前である。
外へ出ると、普段見慣れた景色が全く別のものに変貌している。
車道にびっしりと人が座り込んでいる。
続々と押し寄せる人々。
立ち並ぶ屋台。
そこここに立ちはだかる警官が、座る場所もないくせに立ち止まるなと連呼している。一体どこへ行けというのだ。


一人であることが幸いして、ひょいと隙間を見つけて座りこんでしまう。
やがて花火が盛大に上がり始めた。
さすが日本屈指と言われる大会である。玉数や玉の大きさに圧倒された。


但、隅田川沿いは木が多くて、花火を打ち上げる場所としてはあまり適当ではないと感じた。朝9:00でグランドが埋まってしまうのも、見学可能場所の面積の圧倒的な少なさゆえだろう。


何はともあれ、今年の大会は言わば囮である。
場所取りの実際や、花火が上がる箇所等の情報を得ることができた。


来年こそはちゃんと場所取りをしてゆっくり楽しみたいところである。
アンフェアーはもうたくさんだ。□