内食と外食

 

「これなら喫茶店に行く必要もないね」

 

ネットで取り寄せた高級紅茶を丁寧に淹れた細君がつぶやいた。

自宅で料理を本格的にするようになってから外食に対する考え方が変わってきている。
自分で出来るていどのものならば、わざわざ外で食べる必要はない。
外で食べるのであれば、絶対に自分では作りえないもの、自宅では体験できない徹底したサービスや空間など、まさにプロフェッショナルの仕事だけをすみずみまで味わいたいのである。

先日、北新地の、とあるレストランでランチをいただく機会があった。
北新地でも老舗で、おいしいと評判の店だったから、期待もひときわ大きかった。
お店に入ったとき、静かできれいな店内に、ほわーっとなった。期待はますます膨らんだ。
だが、ひとつ、またひとつと料理が出てきて口にするたびに、そんな期待はどんどんしぼんでいくことになったのでる。

「洋食、嫌いかもしれない」

細君が帰り際につぶやいた。だが、きっと細君は洋食が嫌いなのではないのだと思った。たんに、今回の食事がよくなかっただけだと思うのである。

メインで出てきた豚肉のパン粉揚げは、あまり火がよく通っていなかった。
そういう料理かと思って口にしてみたけれど、半分くらい食べた段階で、お腹いっぱいになってしまった。
すぐにそれは、お腹がいっぱいになったのではなくて、たんに胃がもたれたのだと気がついたのだった。
最後に出たデザートは、抹茶ソースのバニラソフトクリームだったが、なんだか胃もたれに追い打ちをかけるような濃さだった。

給仕の男性もよくなかった。
食べている料理の上から手を伸ばして手前にある皿にパンを入れてくれるのだが、食事中の皿の上に手を伸ばすのではなくて、後ろに回り込んで背後から入れてくれるべきなのである。
食べた皿もどんどん片付けて行ってしまうし、なんだかファミレスのパートタイムジョブのように感じてしまった。

確かに、これらの料理を自分で作れるか、と問いかけられてみたら、僕にはまだできないだろう。
だが、これならばむしろ、自宅でお魚を焼いて、お豆腐とねぎのお味噌汁と、納豆をいただく方がおいしいだろうと思った。

外食に行くということにもっと徹底した緊張感を持ちたい。
外食でしかできないことを見据え、自宅での料理の水準をもっともっと引き上げていく。そういう気持ちで外食、内食に臨みたい。

消費税10%だの軽減税率8%だの、店内ならば10%、持ち帰りなら8%だの、連日ニュースで騒いでいますが、この機会に、外食、内食の楽しみ方にいっそうの工夫が必要だと感じている。□