帰宅途中の道にあるケーキ屋に足を運んぶようになった。
毎日である。
色とりどり、美味しそうなケーキがウィンドウに並んでいる。
欲しい。食べたい。だけど、買うわけではない。
ただ、ウィンドウの中にあるケーキをじっと眺めて、ため息をついて、帰るのです。
明日は買おう、とだけ思って。
買いなさいよ!と自分にツッコミを入れる。全くひどい客である。
吝嗇というわけではないのです。ひっぱっているのです。
お寿司やうなぎと同様、ケーキだって究極の非日常なのですから。
ハロウィンの夜に選んで選んで選び抜いたケーキを買って帰りたいのです。
全部美味しいのだろうけれど。その中でも飛び切り美味しいやつを間違いなく手に入れたい。そのために毎日毎日、下見をしているのです。
これまで、ケーキとかデザートというものにそれほど関心を持ってはいませんでした。
なにせ、のんべえですから。
コスパの高い昭和的な居酒屋に入って、吉田類先生のようにべろんべろんになるだけで男たるものしあわせなのです。ケーキの力を借りるまでもありません。そんな風にずっと生きてきたのですが。
ちょっとしたきっかけでケーキ屋さんをのぞいたときに、気づいてしまったのです。
「なんてきれいなんだ!」
小さな世界の中に宇宙を感じる美学、というのが日本にはあります。
例えば、「盆栽」や「御神輿」「焼き物」などには宇宙のように深い美学が結晶化されています。
神社や日本庭園といった日本的な美を、持ち運べるほど小さな形に切り出して作品化する。小さいからこそ狭いからこそ、そこに詰め込む美術があります。そういうものがとても好きなのです。
偶然ケーキを食べたときに感じてしまったのでしょう。
ケーキも、盆栽やお神輿と同じ「小さな宇宙」なのだと。
それから、毎日のようにケーキ屋さんをのぞくようになりました。
毎日食べる必要はありません。
ただきれいなものを眺めていたい。食べるのは特別な日だけでいい。
そういう世界を絵画世界で表現したいのです。
ハロウィン。ケーキ。
それらが、偶然にも自分が目指している作品のゴールを改めて指し示してくれたのでした。
TRICK OR TREAT!
ハロウィン、ナイスです。□