バリアフリー

 

夕方、百貨店地下フロアにあるスーパーに買い出しに出掛けた。

 

自動車を駐車場に停め、百貨店への連絡口に向かってみると、

 

「しばらくの間、当店は18:30で営業終了と致します」

 

シャッターが降りていて百貨店内に入れない。コロナである。
駐車場からスーパーに行くためには百貨店を通らないと行けないようになっている。

「そんなわけない。行けるはず」
思い込みはやっぱり思い込みだったのだと、百貨店を通らずにスーパーへたどりつくための別の道はあるのだと、これまでの自分を否定して、新しいルートを信じて探してはみたが、やっぱりない。
「なんてアクセスの悪いスーパーだ、百貨店ももうちょっとがんばりやがれ」と毒づきながら、結局ぐるりと大きく建物を正面入口まで回り込んで、ようやくスーパーにたどりつくことができたのである。

が、スーパーにはたどり着いたのの、気持ちは暗い。

これからここで購入した全てのものをかついで、あの建物を回りこむ遠路を歩いて駐車場まで戻らなくてはならない。
今日は安売りの日でもあり、しこたま買うつもりできていたが、今日は軽めにするか、なんて、一瞬折れかけたりもしたのだが、やはり妥協はできない。

 

結局、両手に袋3つ。がっつりと買い込んだ。

 

できるかぎりカートで駐車場まで近づけないものかと見回してみると、エレベータを発見した。こんなところにエレベータがあったのか。これまで全く気付くことはなかった。
ひとまず1Fまでカートで上がり、百貨店を出る。
さらに楽はできないものかと見渡してみると、建物を迂回する歩道橋にもエレベータを発見。
かなりの遠回りとはなったものの、合計3基のエレベータを乗り継ぐことで、なんとか駐車場にたどりつくことができたのだった。

ふだんから連絡口や階段を使うのが当たり前で、こんなところにエレベータがあることを知りもしなかった。だが、階段を使えない人にとっては、むしろ、このエレベータこそが当たり前だったりする。そしてそれは、ふだんの手段に比べると概ね距離もあるし、時間もかかる手段になる。
アキレス腱を切った知人が、普段の通勤時間の倍くらい時間がかかるといっていたのを
思い出した。

 

コロナが来て、バリアフリーを知る。

 

手段はある。だがとても使いやすい状態とは言えない。
まだまだバリアフリーも発展途上のようである。

そんな買い物体験となった。□