一発、二発、散髪。

 

長い在宅勤務で仲間の顔を久しく見ていなかったのだが、ネット会議で久しぶりにあってみると、山小屋に暮らす狩人みたいな髭男爵になっていて、仰天した。

 

会議をするしても声だけであり、人前に姿をさらす必要もないので、男子は髪も髭ものび放題、女子は化粧も省略、いでたちはジャージやらパンツ一丁やら、好き放題のようである。誰もが郷ひろみのように、「いつでもどこでもON!」というわけにはいかないようである。

そういう自分としても、さすがに、それほどまでに乱れてはいないとは思っているものの、気づけば散髪にもとんと行っていない。

緊急事態宣言がさらに延長されてしまったから、解除されるまでもうしばらく、水爆が落ちたかのようなこの、もっさり頭を放置しようかとも考えたが、さすがに爆発し放題にも限界が来た。

 

そんなことで、ようやく散髪にでかけたのであった。

 

やっぱりいいものである、散髪は。

 

美容院に行ったりもしていたが、美容院=かっこよくしてくれるところ。という都市伝説は切り捨てることにした。
美容院はどこも、おしゃれである。店内はきれいだし、インテリアもかっこいい。若くてかっこいいカリスマ美容師さんがスマートに髪を整えてくれる。

「あなたは前髪が課題」

そんなことをずっと妻から指摘されていて、床屋では解決できないと思い美容院をはしごしていたのである。
だが、結論から述べると、素晴らしいカリスマというものには出会えなかった。

 

席に着くや否や、いきなり頭を洗い出す店があった。
カットはその後なのである。まず、頭を洗うのであった。

 

えっ!?
髪の毛を切ってから洗うのではないのか?それがいまどき?それが美容院?
........と思って黙って任せていたが、自宅に戻ると案の定、髪の毛がばらばらと落ちる。いわんこっちゃない。

 

クーポンが使えますよ。
さぞ安くやってくれるのかと期待してみたら、あとからあとからいろいろなオプションやらが付いたとかで、最後に提示された額は¥7000だった。高い....。

 

以来、気楽なのがいい、と普通の床屋に戻したのだが、そこの若い青年の腕がとても良かったのである。
期待をせずに入った理髪店だったが、そんなときにあたりを引き当てるようだ。
仕事が丁寧だ。腕もいい。リラックスしてお願いできる。値段も安い。
名札をみたら「店長」とあった。納得した。
うまい人は、美容院に限らない。どこにでもいるのだ。

 

以来、ずっと、散髪はここだ。

きどらなくていい。仕事が丁寧、僕にはそれだけでいいのである。□