歴史的な傑作であることは間違いない。
だが、子供たちから沸き上がったこの空前の大ヒットがなぜ起こったのかはまったくわからない。
家族や仲間たちへの絆や、過去から未来へつながっていくこと、といったテーマは美しいが、子供たちの理解の及ぶところではないように思う。
鬼との戦いでは、手が飛び、首が飛び、大切な人ですら、血みどろになる。こちらも子供たちに見せてよいものかと思うくらい凄惨でもある。
アニメ版は深夜枠で放映され子供たちの目の届く時間帯ではなかった。
「ピアノ売って頂戴~」
財津一郎が登場するタケモトピアノのCMを聞くと、泣きじゃくる子供がぴたりと泣き止むという。
子供は別にピアノが好きなわけでもないだろう。それでも何か不思議な旋律が子供を落ち着かせるのかもしれない。
僕らは、鬼滅の刃の絵や物語を追いかけているが、子供たちが目にしたり感じたりしているのは、そういうところではなく、画面から出てくる、作者のもつ慈しみのにおいや色なのではないか、と勝手に思っている。□