ミイラ先生 論

 

「ミイラ先生」。

 

楳図かずお先生の傑作ホラー漫画である。

 

まず、タイトルからして、すごい。

タイトルを見るだけで、興味を引き、物語の骨格や怖さが瞬時に伝わる。
「言いたいことは一言で伝えろ」なんていうプレゼンの鉄則そのものである。

 

そして、最初の5ページがすごい。

教会の祭壇に保存されているミイラに、雨もりがしたたり落ちている。
そこに、巡視に来たミッション系女子学園の美人シスターの教師。
ミイラが蘇り、シスターに襲い掛かる。
いきなりの戦慄。迫力。
そして、どうなってしまうのだ?!と、冒頭から読者の目をくぎ付けにする。
これもまた物語や漫画を描く者の鉄則なのだろうが、それを軽々と見せつけてくれる。

 

更に、構成がすごい。

教会にミイラなんているわけがないのに、なんとなく「いそうだな」と思わせてしまう絶妙な組み合わせ、構成。がすごい。

絵画の構成をしているとき、いつも何かが物足りなくて、とってつけたようなモチーフを描いて、絵をこわしてしまう。

 

「そんな組み合わせは、世の中に実在しない。

 でも組み合わせによっては、自然に見えて、

 加えて、世界の美しさや面白さを増幅する」


そんな絶妙な構成を実現するモチーフが必ずあるのである。僕はいつもそれが見つけられない。
だけど、楳図かずお先生は、これまた抜群のセンスで、教会+女学校+ミイラという組み合わせを違和感なく構成して、相乗効果による抜群の恐怖を描き出したのである。

 

わかっていながらも、同時に達成することが難しい条件を、軽々と満たしている。

これが、楳図かずお先生の底力なのである。□