楳図かずお先生の「14歳」を一気に読んだ。
全4巻。だが個々は1000ページを超える書籍としての限界ぎりぎりの厚さである。
自宅の書棚にずっと並んではいたものの、「明日こそは!」と思っているうちに購入してからもう10年もの時間が経ってしまっていた。
「あれらの書籍はいったいいつになったら紐解かれるのだろう.....?」
テレワークのオフィスと化した自宅自室で、長い間、紐解かれる機会を取れずにいる書籍や漫画の背表紙を、仕事の合間に、机上から眺めて、そんなことをぼーっと考えていたりしていたのである。
最早、自分で買った書籍でありながら、半永久的な、つん読状態に突入し、これはもしかしたら定年を迎えるまで、もしかしたら死ぬまで紐解くことはないのではないか!?........とすら思っていたりした。
読まれることを待っている彼らから、順番に読み、片付けて行けばよいのだが、人生ってのはけっこう「割り込み」というのが入ってくるものだ。
書店にふらと立ち寄ったときに目に入った新刊を衝動買いして、読まれるのを毎日待ち続けているつん読くんたちを裏切って、若い本に先に飛びついてしまうのである。
人は、若い女の子や若い男の子を好むように、本に関しても、歳をとった本よりも若い本が好きということなのだろうか。
まあそんなこんなで書棚でずっと背表紙を見せつけていた「14歳」なのだが、このたび六本木で開催した楳図かずお展を見に行く前に、是非読んでおかねばなるまいと、ついに封印が解かれることになったのであった。
「14歳」はもう25年くらい前の作品になる。
当時ビックコミックスピリッツの巻末にずっと連載しているのを眺めてはいたが、あまりにも連載が長く、物語が哲学的であったこともあって、当時はなにがなんだかよくわからない。と読むのを投げてしまっていたのだが、今改めて紐解いてみて、
「なんてすごい作品なのだ」
と、唸ってしまった。
20年以上も前から、これだけの「未来」を予期し、これだけの骨太な作品として描き切っていたのかという楳図先生の先見性や、独自の表現技術、底力、物語にひきつけられ、百科事典のようにぶあつい4冊でありながら、一気に読み終えてしまった。
楳図かずお先生といえば、ホラーというイメージが強く、本作にもその素養がしっかり備わっているのだが、どちらかというと、SFや未来への警鐘というような主題があって、娯楽と言うより、哲学書のような、重さを感じる物語である。
ラストには18ページに及ぶ書下ろしも加えられ、主人公のアメリカと共に、長い宇宙の旅を終えた気持ちで涙を噛みしめながら読み終えたのであった。
今、この時代、このタイミングで「14歳」を読めて本当に良かったと思う。
そして、手前味噌ではあるが、わが本棚のなんと、奥深いことか。(そこか)
今なお、ハードなつん読状態になっているこの本棚に、まだ、どれほどの、すごい本たちが眠っているのか。
若い本もいいけど、やっぱり古くてもすごい本もいいよな。
定年を待っている場合でもなく、今すぐにでも、つん読をどんどん解消していかねばとも思ったのだった。□