楳図かずおを読みたい。

 

楳図かずお先生が、大美術展を開催中である。

 

85歳での、まさかの、101枚にわたる油彩画での新作発表。

 

その計り知れないパワーに圧倒されると共に、ファンとして首を長くして待っていた新作に、心がサタデーナイトフィーバー状態である。

 

楳図かずお先生の作品の多くをコレクションしてはいるが、全てを持っているわけではない。

特に今回の展覧会で発表される新作は「わたしは真吾」の続編とされる作品のようだが、その「わたしは真吾」を僕はまだ読めていない。

この機会に読んでみたいとは思うものの、ほぼ絶版状態で手に入らない。

電子書籍としては売られているが、できることなら紙の書籍で手に入れたい(ここらへんが古い人間)。

合わせて「まことちゃん」も読み直したい。こちらは文庫版で手に入れることができるが、楳図かずお先生のあの原稿の密度を文庫で読むのはいささか勿体ないと思っているので手を出していない。

あらためて今回の展覧会を記念して、楳図パーフェクションシリーズで少し大きめのサイズで再リリースしてほしいと願っている。

 

楳図かずお先生の作品世界については、「怖い」「気持ち悪い」という人も多いだろうが、むしろその言葉こそが、楳図作品が狙っているところで、ほめことばということになるだろう。漫画という手段で表現された、あの怖さは、誰もまねすることができない。まさに楳図かずお先生だけがもつ才能であり、センスであり、技術なのである。

江戸川乱歩の作品の、文体から滲み出してくる、あのどろどろした世界表現を、誰もがまねができないように。

 

「ほうれい線を黒く描くことで恐怖を表現したのは漫画界の大発明」

 

楳図かずお先生の作品の怖さを説明した、江口寿史先生のこの言葉もまた、的確ですごいと思う。

 

漫画表現の歴史年表があるとしたら、沈黙を表す「シーン」という言葉に並んで、「ほうれい線を黒で描いて恐怖を表現する」という発明も、間違いなく刻まれることだろう。□