吉野には電車で行くのが良いと思っていた。
特に桜や紅葉のシーズンは大混雑となって、
奥ゆかしい吉野の道をおおいつくした車は、
見るのも、乗るのもしんどい気持ちになる。
電車ならば、時刻通りに目的地に到着するし、
現地では徒歩だけになるから小回りもきく。
車窓からは、都会から緑や田畑の多い景観に
ゆっくりと変わっていく様が美しく、それを
眺めるだけでも旅への心が躍るものだ。
そんなわけで、
吉野には電車で行くのが良いと思っていた。
が。
電車は、帰りが嫌だ。という声がある。
行くときは確かに旅情が感じられて良い。
だが、旅が終わり、静かで美しい町並みから
あっという間に都会に戻り、天王寺駅の喧騒に
放り込まれたとき、さっき前まで安らいでいた
気持ちが一瞬にして打ち消されてしまうような
気持になってしまう、という声がある。
まさにそのとおりであった。
あの都会の混雑で安らいだ心がぐちゃぐちゃに
されてしまうのを避けるのであれば、車での
往復も捨てがたい手段であろう。
電車か、車か。
それぞれに甲乙つけがたい長短があったりして、
もう少しうまい行き方、帰り方を考えなくては
いけないのかもしれない。
車で往復する。ただし、駐車は吉野の一駅前とするか、
あるいはまだ人の来ない早朝に行くか。
きっと、そんな折衷案が必要なのだろう。
改めて世の中、ひとつで決着がつかないことの方が多い。□