父と母を連れ、六本木で二紀展を見学した後、
食事をしようということになって、
近くの店に入ってランチを食べた。
お寿司もお肉も出してくれる店で、
価格もリーズナブルだし、美味しかった。
素晴らしい店だったと思う。全く文句はない。
だけど、父と母が「浮いていた」のである。
店内は若いスタッフに、若い客層が占めていた。
ざっと見てもほぼ40代以下くらいの人間で満たされていた。
流れている曲や、空間デザインの新しさ等をみても、そういう世代の客をターゲットにした店であるということがはっきりと感じられた。
普段はそんなことを感じないのだろうけど、父と母を連れて行ったことで、それがはっきりと感じられてしまったのである。
改めて振り返ってみると、街の中にあるレストランや居酒屋は目には見えないけれど、「ターゲット」というのがはっきり決められていて、それに合致する客を最優先で呼び込めるようにメニューや空間デザインを考えて作られている。
ほぼ、でなく、全ての店が。
しかも、歳を重ねた人をターゲットにした店が、本当に少ない。
そういう世代の人達は外出も少ないし、食べられるものが限られたりもするだろうし、自宅で食べることを好む傾向がある、なんてことが分析されて、まあ有り体に言えば、「そういう世代をターゲットにしても儲からない」ということなんだろう。
その日も、店を選ぶときふと「父と母に合うような店が無いなあ」と感じていたのだ。
そりゃそうだ。そんな店、ほとんど六本木にはないのだから。
では、そんな店はどこにあるのか、そんな店あるのか。と自問してみたら。
ある。
百貨店のレストラン。である。
考えてみると、百貨店というのは、レストランも含め、老若男女全てのお客様をひきうけます。というスタイルでずっときてる。
大声でなく赤ちゃんも。ワーと騒ぐ小学生も。学生も。サラリーマンも。年配の方々も。誰がいても全く違和感がないし、誰もその世代とか見た目を気にせず、それぞれが食事をして楽しく過ごしている。
消費のスタイルが多様化して、客が分散されて、最大公約数的な商売では、百貨店も経営があやうい。なんて言われたりもしているかもしれないけれど、この「老若男女全てのお客様を受け入れる」という万能なスタイルを持っているのは、百貨店しかない。という点に気づくと、すっげえな。と感じてしまったのである。
百貨店は万人のオアシスなのである。□