ドッグスレッド

 

野田サトル先生の新作「ドッグスレッド」の1巻が発売された。

 

 

アイスホッケーのことはよく知らない。

 

だけど、この作品を一言でいうのならば、

「アイスホッケー版スラムダンク」だといえるかもしれない。

 

かつてあまり知らなかったバスケットボールというスポーツを、スラムダンクが「おもしれえ」に変えてしまったのだが、それと同じ感情を、今「ドッグスレッド」に感じている。

自分の中でアイスホッケーが「おもしっれえ」に変わろうとしている。

 

この作品の一番の「すごい!」は、

作者自身が自らのデビュー作「スピナマラダ!」を、「ゴールデンカムイ」を大ヒットさせた今、改めて新作として全て描きなおした。という点だ。

それほど、今なお、自信と愛にあふれた作品なのだろう。
それほどの作品が、かつて不遇に終わったことを、そんなはずはない。とずっと思い続け、今改めて世界に問う。そういう挑戦を、キャリアを重ねた今、するのである。

デビュー作品をリブートする漫画家なんて、かつて見たことが無い。

そしてそれを宣戦布告通り、確実に「おもしっれえ」に変えて世に投げかけている。「すごい!」といわざるをえない。

 

偉そうなことを書いて恐縮だが、

今読み比べてみるとデビュー作「スピナマラダ」には「力み」がある。

物凄く気合が入っているし、アイスホッケーへの愛、読者に伝えようという想いが強い。だけど、それが重い。

すでにデビュー作から、今につながる演出力はしっかりと見えているが、絵も文字もみっちり詰め込まれていて、読むことにパワーが要る。

絵よりもネームに比重がおかれている感じになっているから、文字が多く、パラパラとめくっただけでは、どんなストーリーのかがあまり目に入って来ない。
とくにアイスホッケーシーンでは、ルールや蘊蓄が多く、ゲームの疾走感、スピード感が消されてしまっている印象を受ける。

 

対して「ドッグスレッド」は、「スピナマラダ」とストーリーはほぼ一緒ながら、パラパラとめくるだけで、大まかなストーリーや、ゲームのスピード感がすっと頭にとびこんでくる。それでいて読者が知っておきたいルールもさりげなく盛り込まれている。

シンプルで美しい絵、コマの使い方・演出、キャラクターの魅力といった面白さ、
が噴出してる。

1巻で1つの試合を描き切るというまとめかた。

30冊ものゴールデンカムイを描き切った経験が見事に活かされている。

 

「スピナマラダ」と「ドッグスレッド」を読み比べることは、これから漫画家を目指す人にとってのバイブルにもなるのではないか。

 

間違いなく、2024年を代表する漫画作品のひとつとなるであろう。□

 

追伸: 荒木飛呂彦先生、「魔少年ビーティ―」と「バオー来訪者」を、今描きなおしてくれないかしら。