大変怖い本である。
江戸時代に書かれた「耳袋」という書物の怪談・奇談を、かの京極夏彦が現代的に意訳した書物である。
音楽的に言えば「カバー」ということになる。「カバー」は大抵オリジナルに食われる。が、京極夏彦の手にかかれば耳袋もオリジナルを超える。
言葉と言葉のあいだにある「間」というか、あえて描かない「間」というか。
その「間」が怖い。
読んでいくうちに、その「間」に個々人の持つ「恐怖の象徴」が入り込んでくる。
各話のタイトルのつけ方も良い。
「うずくまる」「ぼろぼろ」「がしゃん」「もうすぐ」等々。
読んでいくうちにその意味がきれいに氷解する。
話の内容がばれずにかつ納得がいく言葉が選ばれている。やっぱりうまい。
原文も載せられているので比較しながら読むのも良い。夏の夜に最適の一冊である。□