「ナイルに死す」 アガサ・クリスティ著 加島祥造訳 ハヤカワ文庫(10点)
素晴らしくおもしろかった......!
600ページほどもある大ボリュームです。
アガサ・クリスティ作品の中でも最大ボリュームのようです。
手に取ったときはちょっとひるみましたが、だからこそ、じっくりと丁寧に腰を据えて読もうとも思えました。
それに応えるように、このボリュームだからこその登場人物の多さ。そして一人一人の人物が奏でるドラマの作り込みはすごい。屈指の密度です。
前半の250ページを、この登場人物たちのドラマを描くのに費やされていて、事件はまったく起きないんだけど、本編のメインキャストともいえるリネット・リッジウェイ、サイモン・ドイル、ジャクリーン・ド・ベルフォールのもつれる三角関係の恋愛愛憎劇だけでも充分に読みごたえがあるし、吸い込まれるように読んでしまう魅力がある。
事件が起きてから後半の展開もまったく退屈せずジェットコースターのように読み進めました。無駄がまったく無いのです。そして驚愕の犯人とラスト。
悲しくも美しく終わっていくドラマにため息がでてしまいました。このボリュームを読み切った充実感も味わえました。
ポアロの言葉。
これって人生の哲学のひとつにもなると思いますね。
「昔、私は一度、考古学的な発掘をしたことがあって、その時に学んだことがあります。それはですね、つまり、発掘をしているうちに何かみつかると、そのまわりを広く整理をして、崩れた土はすっかり取り除き、その物体に別の物がついていたら、ナイフできれいに削り落とし、最後にその物体だけぽつんと取り残されるようにするのです。
そうすれば、外部の無関係なものに邪魔されないで写生もできるし、写真にとることもできるわけです。今、私がやっていることがそれなのです。事件とは無関係な、まぎらわしいものを全部とりのぞいて、真実だけがみえるようにする。」
ポアロシリーズの中でも屈指の完成度。是非皆様にも手に取っていただきたい(誰かとミステリについて語りたいのです)。□
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注意
ここから下は読みながら作った人物相関図を
張りつけてます。犯人も全て書いてますので、
これから読む人は決して見ないように!!
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