今日の一冊

 

ビブリア古書堂の事件手帖7」三上延 著 メディアワークス文庫(9点)

 

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ついに最終巻まで読破しました。
物語は、最終巻にふさわしい長編で、モチーフはなんと!シェイクスピアの古書。

いつもの薀蓄とミステリー要素をしっかり持たせながら、どちらかというとラスボスたる母とのオークション対決!という新しい展開。そして物語の終焉。
これまでとは違う展開で最後まではらはらと楽しく一気に読んでしまいました。おもしろかったです。

本作の面白さは、美術作品を鑑賞する面白さにもつながっているなと感じます。

ビブリア古書堂の事件手帖」は古書という一見、わかりにくいものの面白さ、美しさをエンターテインメントという誰にでも分かる形にして見える化したものであると感じました。

対して美術作品では、書店に行くと「美術の見方」「絵画の楽しみ方」というような本を良くみます。
絵画、美術というものに何となく関心はあるけれど、なんだか敷居が高いな、よくわからないな。と思っている人が多いものです。
音も無い、言葉も無い、動きも無いたかが1枚の絵画なんだけど、実は表面をぼーっと眺めるだけでは読み解けない、様々な情報をもっています。
作家の生きていた時代背景、作家の性格、癖、生き方、考え方、人生等、それらが全て合わさって、作家の手を通じて想いが筆に乗って、作品が完成しているのです。
絵の表面からは読み解けないものが読み解けるようになる悦び。
「ビブリア古書堂」は絵画ではなく、古書をモチーフにしてそのものの裏に隠された秘密や謎を読み解いて驚きの発見を提示していくのです。
きっと作者の三上延氏が、絵画を扱う作品を書いたら、きっと書店にならぶ「西洋美術の見方」よりもよっぽど面白い本ができるのだろうなと思います。

スピンオフ作品がまだ続くようですが、いったん本編はこれでおしまいということで、早速ちょっとしたビブリアロスに陥ってます....。□