今日の一冊

 

とんぼの本つげ義春 夢と旅の世界」新潮社

 

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名著です。

つげ義春ファンブックの最高峰としてもよいかと思います。

 

美術・絵画とは目で観るニオイ。とするのが僕の持論ですが、つげ義春作品は、目で観るニオイを最も感じやすい作品のひとつであると思っている。そういう意味で、この本は本当に「におう一冊」である。

原画で読む「ねじ式」「ゲンセンカン主人」「紅い花」は、単行本に収録された作品とは違い、修正やちょっとした汚れもそのままはっきりと見えて、まさに生原酒という感じで、フィルタなしでそのままつげ作品のにおいが噴き出しているし、美術史家・山本雄二氏との対談からは、これだけの作品を紡ぐ作家ならではの、どうしようもない人間臭さがあふれ出している。

トドメは、つげ義春氏の旅の遍歴と辺境の温泉宿での写真たち。
どの一枚を見ても、漫画で描く世界やにおいがそのままプンプンとにおいたっている。

漫画だろうが、写真だろうが、文章だろうが。

どんな手段を使っても、つげ義春作品になっているし、そのにおいを満喫できる一冊である。□