アジア発のアカデミー作品賞を受賞したポンジュノ監督の韓国映画である。
貧民街のビルの半地下の隙間に押し込められるようにして4人の家族が住んでいる。
父は失業中。息子ギウは大学入試に4回失敗し、妹ギジョンは美術を学びたくても学べない。
ある日、ギウが大学に通う親友から、ある富裕家庭の娘への英語教師のアルバイトを紹介されたことをきっかけに、妹を富裕家庭の息子の美術教師に、父を専属運転手に、母を家政婦として就職させ、富裕家庭にパラサイトさせていく。
前半は、貧民のような暮らしをしていた家族が、富裕家庭にパラサイトする物語の面白さに引き付けられていくが、きっとこのまま逃げ切れはしないな......という後半に向けての破局への不安を感じさせる。
ここに監督としての視聴者との厳しい見えない戦いがあったと思う。
富裕家庭にパラサイトがあばかれて「ああ、ばれちゃった、ごめんなさい」といった展開ならば誰でも読めてしまう。その裏をいかに突きながら視聴者を驚かせるか。
ハラハラしてみていたが、予想以上の破局ががきちんと作り込まれていた。こう来たか。
そこから、物語は、痛くて、悲しい結末に向かっていく。
息子が富裕層の家に、妹を優秀な美術教師として送り込んだり、父を優秀なドライバーとして送り込んだりと、その用意周到なところや機転が利くところに、個々の家族の優秀さが感じられるんだけど、それでいて、仕事にありつけない。という現代の韓国社会の不条理を風刺しているように感じた。
また、効果的に雨のシーンが使われている。
洪水が起こって半地下の家が水に埋もれてしまうような大事故があった後も、富裕層の家庭にとっては、それがまったく知りもしない世界であり、華やかなパーティを開いていたりすることにも、一層経済格差の痛みを感じさせる演出ができていたように思う。
対して、4人家族は、半地下の厳しい生活を送りながらも、父は息子をねぎらい、息子の相談に真剣に計画や言葉を返そうとしている。父と母も、兄と妹も、口先はきついことを言いながらも、互いに強い尊敬の絆で結ばれている。
「無計画でいることが、いちばんうまくいく計画だ」と、ギウを諭した父が、物語の終盤で、外に出てこられない場所に閉じ込められてしまった状況を受け、ギウは計画を立て、現実と向かい合うことを決意する。そこからはどん底からの小さな希望の光を感じた。
娯楽的な要素もあり、ちょっと痛くて怖い世界もあり、また新しい世界へ向かう家族の絆も描き切っている。
いろいろな側面の切り口から、いろいろなことを感じ、考えさせてくれる映画でした。
追伸。家族ものの映画でいうのならばこの作品に1年早かった「万引き家族」も強烈なにおいがあった。こちらはカンヌでのパルムドール受賞でしたね。□