落語の「廓噺」が好きだ。
今となっては跡形もなくなった遊郭に思いをはせる。
遊びたいわけではない。
そういう非現実な世界が、かつて実際にこの世の中にあって、それが人々を動かし、文化となり、文学となり、美学となり、歴史となり、遺産となりつつある今、それを振り返りたい、消えゆく灯を守りたい気持ちがあるのです。
写真集です。
テーマの切り口はとてもいい。
だけど残念ながら、写真や、本としての構成は思ったほどうれしくはなかった。
建築全体の造形を隅々と余すところなく、俯瞰したかったのだけど、極私的なズームアップ多いし、切り取り方に共感できない写真が多くて、ぶっちゃけ、あまり萌えない。
見たいのはそこではない。という気持ちが溢れます。
本当に萌える写真ならば、まず絶対に即買いするだろうし、それを肴に何枚かくらい描きたいくらいの高揚感が溢れるのだろうけど、そういう写真は1枚もなかった。「ここはどこ?!」と感じたり、「匂う」という写真は、ほとんどなかった。
さらに一枚一枚を見るたびにどこで撮影したかを知りたくても、そんな説明が付いていない。
巻末にマップがあるけど、いちいち巻末を見なくてはわからない本としての構成も好きにはなれなかった。
全国の遊郭を歩き、写し、1冊の本を作り出したまでの偉大なる力は感じながらも、読者が見たいことにはつながっていない、そんな感じがして、勿体ない気持ちになりました。
つげ義春の写真であれば、圧倒的にニオイますものね。□