ゲルハルト・リヒター展を鑑賞した。
今、僕が観たかったのは、まさに「これ」だった。
体中から全てのビタミンが枯渇してしまった状態で、グラス一杯の果汁100%のレモン汁を一気に飲みほしたかのような。そんな満ち足りた気持ちになった。
代表作とも言われている「ビルケナウ」は、2022年、というかここ近年でもダントツのトップクラスの作品だったと感じた。
アウシュビッツという負の歴史をベースとした作品といったことを知る以前に、この作品を目に入れた刹那、黒と白をひっかいたような画面の上に、赤と緑が散りばめられているこの抽象画が、絵画として突き刺さった。
言葉は悪いかもしれないけど、「かっこいい」と思ってしまった。
ジャクソン・ポロックの作品を始めて目に入れたときのように。
4枚で1つの作品というところも、それ以上でもそれ以下でも表現できなかったというセンスを感じた。
さらに、対面に写真で撮影された版のビルケナウの展示と、下に塗りこめられているとされる4枚の写真の展示も含めて、空間全部が作品になっていると感じた。
ああ、絵画はここまで来てしまったのか。そう思った。
「今のままの俺じゃあもう戦えねえ、ギア2ndに引き上げるしかねえ。」
と叫ぶルフィのような気持になる。
圧巻でした。□