「夫のちんぽが入らない」こだま著 扶桑社 (9点)
書店で話題書として山積みになっているのを何度か見ていたが、このタイトルにちょっと引いた(スマン!)。
レジに行くのがなんとなく憚られて(スマン!)、図書館に予約したら半年ほど待たされることになった。
昼休みに読んでいたら、職場の同僚から「何を読んでるの」といきなり声を掛けられ、頭が真っ白になった。とっさに「どうでもいい本だよ」としか答えられなかった(スマン!)。
作者にも同僚にも大変申し訳ない気持ちになった(スマン!!)。
衝撃的なタイトルである。
そのタイトルには下ネタならではのユーモラスな印象も受ける。
だが、そんなタイトルとは裏腹に、読んでると大変見事な文体である。これ芥川賞?と錯覚した。芥川賞にしても遜色はないと思う。
「ちんぽが入らない」という衝撃的なカミングアウトで始まる物語は、強烈な引力でもって読者を、作者の独白ともいえる戦いの半生にひきずりこんでくる。
やがて「ちんぽが入らない」という一つのコンプレックスは、失笑から、作者の切り離すこともできない肉体の一部となっていく。次第に読む側もそれに共感していく。
夫婦や仕事の悩み、問題がテーマとしてしっかりと中心に据えられ、時折、毒も噴出させながら作者の独白が続く。ページをめくる手が止まらない。
文体はたいへん明瞭で、読者を飽きさせない独自の表現が流れるように重ねられる。大変、力のある作家だと感じる。
多面的な見方ができず偏見をかかえてしまいがちな世間の目というものへの鏡であり、警鐘でもあり、戒めでもある。
名著である。偏見をもたずに読んでみることをおすすめしたい。□