くせ毛

 

「くせ毛ですね」

 

床屋の席に座り目を閉じ髪を切ってもらっているときに、

初老の理髪師が声をかけてくる。

 

「さつきはくせ毛ねえ、ママの小さい時にそっくり」

「私も大きくなったらママのような髪になる?」

「そうね」

「(嬉しそうににっこり微笑むさつき)」

刹那、となりのトトロで、さつきとお母さんの会話シーンを思い出してしまったが、

 

「僕も歳をとったらあなた(理髪師)みたいな、いぶし銀の髪になるかなっ?」

とは問いかけることはしない。別になりたくもないし、放っておいたら嫌でもなってしまうだろうからね。

 

シャンプーとドライヤーで女性の理髪師にバトンタッチしたが、

「くせ毛ですね。

 くりくりの一般的なくせ毛というよりさらにくせが強そうですね。

 雨の日とか大変でしょう」

同じようなことを言われる。

よほど僕の髪は、くせ毛なのだろう。くせ毛 OF くせ毛。ということだろうか。

 

たしかに、自覚している。

幼少のころは、雷に打たれた直後のような状態のちりちりな髪だった。

あの頃の写真を観たら、誰もが「パーマでも当てているのか」と問いかけることだろう。全部天然なのであった。

しばらくすると、雷様は卒業するが、天然パーマは残る。

以前スケッチ旅行で広島にでかけたときのビジネスホテルで、ドライヤーがなくてそのまま眠ってしまったとき、まるで事故にあったかのような寝癖がついてしまい、終日収まることがなかった。

まあこれも一つの僕だ。と今は誉め言葉のように受け止めることにしている。

 

蝉がなき始めた。

ばっさりと髪を切ってもらって、さっぱりと夏を過ごしたいと思います。□