「竜とそばかすの姫」について。
物語の細かいところで、いろいろ気になるところはあったのだけど、映像と音響の圧倒的なクオリティに、そんなことが全て押し切られて、観終わったあとは「すごかった......」と、ため息が漏れてしまうような、そんな映画だった。
ミレニアムパレードの楽曲「U」にはじまり、世界の多方面からの才能が集結して作られたということで、「君の名は」や「鬼滅の刃」に続々と大ヒットを飛ばした東宝の、アニメ作品には惜しみなくお金を注ぎ込め!というバブルのような、追い風ムードが強く感じられる。
一番印象に残ったのは、主人公・すずの仮想空間上でのアバターであるベル(BELLE)の存在感である。
「ディズニー」
である。
50億人がいる仮想空間で頂点に君臨する歌姫・ベルと、仮想空間で暴力事件を起こしパトロールから逃げ回る、竜との交流は、まさに「美女と野獣」である。
仮想空間からとびだすと、高知県の田舎の高校生すずの生活が描かれ、こちらは「ザ・日本アニメ」である。
よくもまあ、水と油のような2つの世界観を1つの作品に封じ込めたものだと思う。
仮想空間でのベルを追いかける50億のアバターたちの目と、映画館でベルを見ている自分の目がシンクロして、まるで、学園祭のアマチュアバンドライブのゲストボーカルに、テイラー・スウィフトがやってきたような、かつての日本人が欧米人というだけで、漠然といだいていた、憧憬やコンプレックスのようなものが、自分の中に沁みわたってきた。
体育館から出てきて「はぁ....テイラー・スウィフト.....」と目をハートマークにしている高校生のような状態で、映画館から出てきた自分は、今なおその余韻に浸っている。
ディズニーの映画を観ているときは、そんな気持ちはないのだけどね。
日本映画の中に、表情豊かな、ディズニー産地直送の美少女キャラクターが、最高の映像と楽曲の中に登場することで、こんな、かつてないUX体験ができたのだと思う。
しれっと、地元のコーラスおばさん5人衆の配役もすごい。□