美術の栄養失調。

 

新しい美術展覧会がはじまってきている。

 

残暑の日々が続いているが「芸術の秋」の足音も聞こえてきている。

 

9月で終わりを迎えるいくつかの展覧会を優先的に見て行かないといけないのだが、どうも食指が動かない。

特に今年はフェルメールの天使が話題になっているのだが、なんだか観に行く前に十分騒ぎすぎてしまっていて、もう観たような気持になっている。
日本人はフェルメールが大好きで(というか学芸員が好きなのだろうか)、数年に一度くらいの割合で「フェルメール」を冠した展覧会が開催されている(ように感じる)。

実際、数年前にフェルメール展が企画され「同時にどれだけ集められるかギネスに挑戦!」.....といったような展覧会があったから、しばらくは静かになるかと思っていたら、今度は「作品中の壁の部分をこすり落としたら天使がでてきた!」.......との騒ぎである。

 

フェルメールの作品が素晴らしいのは充分にわかっている。
ただ、展覧会に行く前に思ってしまうのは「フェルメール以外の何が見所なのか」という所だ。フェルメールの作品1枚を中心に、同時代のオランダの画家たちの絵が並ぶ。そんな感じかと思う。(ふと、ブルースリーの「死亡遊戯」が脳裏に浮かぶ...........)

でも、そういった構成の展覧会をこれまで何度も何度も観てきて、楽しかったという思い出があまり無い。
個々の絵はきっとどれも観たことが無いものなのだろうが、展覧会の構成のやりかたがワンパターンになっていて、そこにきっと飽きてしまっているのだろう。

 

ちょっとした美術の栄養失調状態になってしまっているのかもしれない。

今は、全く新しい現代美術(例えば「地球の回る音を聴く」@森美術館)とか、誰もしらない寺院の屋根裏に眠っているカビの生えた仏像とか、全く予想できないところから突然飛び出してくるような交通事故のような作品を観てショックを受けたい。

 

かつてコンクールに出品した時に、審査員から「全く見たこともないような作品で驚かせてほしい」と言われたことがあったのだけど、今それを自分が言っている。

つまるところ、見すぎてしまった。

つまるところ、僕も歳をとったということです。□