「甘くスモーキーな歌声」
絶妙な表現だと思った。
彼女の歌声を文字で表現するとしたらこれ以外に無い、と思うほどしっくりする。
前回のコンサートは2017年。
その日も雨だった(ということを自分のブログで知った)。
雨という天気も彼女の世界に合うような気もする。
次に会えるのはいつになるのだろう、なんていう切ない気持ちになった。
少し薄れかけていた記憶を確認しようと、5年ぶりの彼女のコンサートに足を運んだが、楽曲が始まるとすぐに、すべてが鮮明によみがえってきた。
これだ。
やはりノラ・ジョーンズの歌声は素晴らしい。
1万5000人のホールであっても、数百人の小さなホールにいるときと大差ないように聞こえる丁寧な音作りだ。
派手なセットも、大音量の音響設備も取り払われて、しっとりと静かに楽曲を楽しめる。どこで演奏しても彼女の世界である。そんな安心感がある。
自分は、ノラ・ジョーンズの全てのアルバムを聴き込み、コンサートをずっと心待ちにしている。というほど熱心に追いかけているわけではない。
1stアルバムを少々聞き込んだ程度の、いわば「にわか」なのだが、それでも初めての楽曲であっても沁みわたるように聞かせてくれるのは、やはりジャジーな演奏とその甘くスモーキーな歌声に、強い魅力が備わっているからだろう。
思わず、空間に次々と放たれる音や声が消えて行ってしまうのをなんとか手の中におさめられないものかと、焦り、手を出してしまうような気持になる。
それは、華やかに開いて次々と消えて行ってしまう打ち上げ花火をなんとか写真に収めようとしているような気持に似ていた。
アンコールは代表曲「Don’t know why」。
出発点であり金字塔となった名曲だ。
演奏と唄声が最も互いを引き立て合って、耳にしっとりと響き沁みわたってくる。
素晴らしい。やっぱりここに戻ってくる。
スコッチウイスキーでもあったらきっとさらに楽しい。
次はビルボードで聴きたいな。チケット争奪戦必至。□