誕生日なのに。(後)

 

誕生日を振り返る、夜。

 

「誕生日なのに。。」

 

ため息を漏らす。やっぱり、ぼやく結果となった。

 

その日、普段は人の少ないはずの職場なのに、

オンラインの打ち合わせをしている人間の声が

フロアに響き渡り、気が散って仕事にならない。

 

休憩でもとるかと席を立つと「財布忘れた」。

 

職場を去り、知り合いの個展に挨拶に行って

絵を眺めながら雑談をする。

ビールでも飲む?と誘ってもらうが、

制作が遅れているから、と丁寧にお断りする。

でも、酒の誘いを辞退するなんて野暮の極みだ。

しかも、個展開催のめでたい席だというのに。

 

本屋に立ち寄ると、

One Pieceの105巻が出ている。

「名探偵のはらわた」が文庫化されている。

雑誌PENが仮面ライダーの特集をしている。

米澤穂信氷菓」が愛蔵版になっている。

誕生日だし、どーんと買うか!と思うが、

お財布が無いから買えない。

 

誕生日だろうが、どんな日でも普通の一日だ。

というか、今日は普通以下かもしれない。

せめて自分へ乾杯でもしたいところだったが。

財布忘れは自業自得だ。

 

目の前で起きていることって、

デフォルトは「普通」である。

誕生日もクリスマスもそうだけど、

特別という日を特別にするには、

やっぱり誰かを巻き込むなりして、

自分から仕掛けなくてはいけないのだろう。

待っていても、何かなんてそうおきるものじゃない。

 

ビジネスとか仕事でもよく聞くけれど、

「おもしろくする」のは、やっぱり自分なのです。□